Observability

Prometheus + Grafana でメトリクスを計測・可視化し、PromQL を実践する

よくあるシナリオ:「なんか遅い」の地獄

大手ECクライアントから「サイトが重い」という報告が。担当エンジニアが5人いるが、誰も原因がわからない。ログをgrepし、サーバーにSSHし、2時間後にやっとDBのN+1問題を発見。その間、売上は止まっていた。

よくある課題
  • ログがありすぎて本当の原因が埋もれる
  • 原因特定に平均2〜3時間かかる
  • 「なんとなく再起動」で対処、再発を繰り返す
  • 深夜に複数人を招集する非効率

可観測性の3本柱

可観測性の 3 本柱

Metrics

メトリクス

いつ・どれくらい悪化したか

Prometheus, Datadog

Logs

ログ

何が起きたか(イベント詳細)

Loki, Elasticsearch

Traces

トレース

どこで遅くなったか(リクエスト追跡)

Jaeger, Tempo

障害発生→Metrics で「いつ・規模」を把握→Logs で「原因」を特定→Traces で「どこが遅いか」を追跡

核心概念を押さえる

メトリクスたとえるなら「システムの体温計」

数値でシステムの状態を継続的に計測する。「今何が起きているか」を定量化。

例:リクエスト数 1,200 req/s、エラー率 0.3%、レイテンシ p99=250ms

ログたとえるなら「システムの日記」

何が起きたかをイベントとして記録する。問題の詳細な原因調査に使用。

例:2026-03-15 03:21 ERROR: DB connection timeout after 5000ms

トレースたとえるなら「リクエストのGPS」

1つのリクエストがどのサービスをどの順で通ったかを追跡する。マイクロサービスで必須。

例:API→認証→商品DB→在庫DB の中で在庫DBが800ms遅延していた

PromQLたとえるなら「観測データへの問い合わせ言語」

Prometheusに蓄積したメトリクスをクエリする言語。SQLのような感覚で使える。

例:rate(http_errors_total[5m]) / rate(http_requests_total[5m]) * 100

USE Methodたとえるなら「インフラの健康診断」

Utilization(使用率)・Saturation(飽和)・Errors(エラー)の3指標でシステムを診断。

例:CPU使用率85%(U)、実行キュー5件(S)、エラー0件(E)→要注意

RED Methodたとえるなら「サービスの顧客体験指標」

Rate(リクエスト数)・Errors(エラー率)・Duration(レイテンシ)でユーザー体験を監視。

例:注文API: 500req/s、エラー率0.1%、p95=180ms → 正常

Prometheus の Pull 型アーキテクチャ

App A :8080
/metrics
App B :8081
/metrics
App C :9090
/metrics
GET /metricsmetrics data15s ごとに Pull
Prometheus
TSDB に保存
PromQL
Grafana
ダッシュボード

AI で SRE の仕事はどう変わるか

これまで人がしていた作業
  • ダッシュボードを目視で定期チェック
  • アラートが鳴ってからログをgrep
  • 複数サービスの障害相関を手動で分析
  • PromQLクエリを一から書く
AI が担う作業
  • 異常値・スパイクを自動検出し先手でアラート(Dynatrace Davis AI)
  • 自然言語で「過去1時間のエラー傾向を教えて」と質問(Datadog Bits AI)
  • 根本原因を複数サービスにまたがって自動相関分析(Grafana Sift)
  • 障害パターンから類似過去事例を即座に提示(AWS DevOps Guru)
人に残る役割
  • AIアラートの精度向上・ポリシー設計
  • ビジネス文脈を加味した優先度判断
  • 観測可能性アーキテクチャの設計・改善
  • 新サービスのメトリクス設計レビュー

主なツール:Datadog Bits AI、Dynatrace Davis AI、Grafana Sift、AWS DevOps Guru、New Relic AI

この先の見通し:AIが常時システムを監視し、異常の予兆を人間より先に検出する時代へ。SREの役割は「監視する人」から「AIが監視するシステムを設計する人」にシフトする。2027年には主要クラウドのAIが自律的に軽微な障害を修復するレベルに達する見込み。

導入による効果の目安(業界の一般的な傾向)

MTTR短縮
-60%
平均復旧時間
誤検知削減
-80%
アラートノイズ
障害予防率
+40%
事前検出で防いだ障害
診断速度
10x
原因特定の高速化